コラム95 軽井沢の A.レーモンド建築を描く2023年11月1日 五十嵐吉彦先月までの暑さと打って変わり、急に涼しくなり11月に入った。近くを散歩していると金木犀(きんもくせい)の花の香が漂ってきて心地よい。今回、軽井沢に建つ「夏の家」を設計した建築家アントニン・レーモンド(1888〜1976)について紹介してみよう。 軽井沢タリアセンには歴史的建物がいくつか移築され、小生が昨年個展をした塩沢湖畔に建つ「睡鳩荘」はW.M.ヴォーリズ設計である。その同じ塩沢湖畔の奥に建つA.レーモンド設計の「夏の家(現在ペイネ美術館)」が、今回日本の木造モダニズム建築の先駆けとして歴史的価値が高いと評価され、正式に国の重要文化財に指定された為でもある。 A.レーモンドはチェコ生まれで米国に移住し世界的建築家F.L.ライトのもとで学び、帝国ホテルの設計の際に来日した。その後日本に留まり、日本の近代建築界に大きな影響を残している。このA.レーモンド設計の建物でよく知られているのは、軽井沢では「夏の家」及び「聖パウロカトリック教会」、横浜では元町にあり我々がよくスケッチする「エリスマン邸」、そして東京では「東京女子大の本館・礼拝堂」等がある。 ただ、小生は軽井沢タリアセンの中の建築物でもこのレーモンドの「夏の家」はあまり多くスケッチをしていなかった。何故なら絵にする場合、外観に魅力があるのは「睡鳩荘」の方であり、 レーモンドの「夏の家」は外観がシンプル過ぎて、絵を描くには魅力に乏しいと思っていたからである。しかしレーモンド建築の5原則である「Simple(単純さ)、Honest(正直さ)、Direct(直接さ)、Economical(経済性)、Natural(自然さ)」があるのを知り、改めて描いたので紹介した。 自然に対する深い想いと、シンプルながらも奥が深い点では水彩スケッチ画とは共通点があると思う。 *下記作品はA.レーモンド設計の「夏の家」: |