コラム91 水辺には魅力テーマが豊富(その2)

<船を描く・九州>  2023年7月1日  五十嵐吉彦

前々回のコラム89にて「水辺には魅力テーマが豊富」とのテーマで主として船について述べた。その続きに九州で描いた船について述べてみよう。このコラムの左下に掲載した作品は長崎港のドックを描いた風景で、小生が乗船した大型クルーズ船の14Fデッキから描いた作品であり、また今月小生HPのトップページ画像の一枚は門司港での船を描いた作品である。いずれも以前に描いた船の作品ながら未発表作品なので紹介をしておこう。

この長崎港の作品を描いた日は、本来日本の北側の北海道・函館で描く予定であったが、 急遽予定を変更して日本の南側の九州・長崎で描いた貴重な作品である。何故函館→長崎?と思われると思うが、発想の転換事例として思い出に残る出来事であった。 実はコロナ禍で大きな話題となった大型クルーズ船「ダイアモンドプリンセス号」に、そのコロナ禍など夢にも思わなかった2014年に乗船した。個人での国内対象旅行で、秋田竿燈祭、青森ねぶた祭と函館等訪問予定の旅であった。祭は雨の中実施されたが、北に進む大型台風が接近してきていた。このまま函館に行けば台風直撃となり、危険である。如何にするか船長も悩んだことであろうと思うが、その時の船長の決断は、函館を中止し、一転、南の長崎に向かうという決断をしたことであった。この為、船はウラジオストクに寄ってから、日本海を一路長崎に向かって進み、無事長崎港に到着。そして停泊中に船の14階デッキの高い所から描いたのが下記の作品だ。

この様に1枚の作品でも、眺めるとその思い出が、蘇ってくる。水彩スケッチの場合は写真よりもよくその風景を記憶していると思う。そして、上記の如く、台風を避けての大胆な方向転換を経験した事は貴重な記憶となっている。我々日常のスケッチ講座も安全第一として行動しているが、最近は突然何が起こるかわからない。場合によっては、発想の転換で、大胆な決断も必要かもしれない。

水辺には魅力テーマが豊富

*長崎港でのドックヤードを船の14階デッキから描いた。後ろの橋は「ながさき女神大橋」 F4サイズ。

*尚、左作品と略同じ方向で1階から描いた作品は画集U(2015刊)P52に掲載している。


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