コラム88 対比とそのバランス その(2)

2023年4月1日  五十嵐吉彦

新しい4月期の始まりである。先月は日本が野球のWBCで優勝し世界一となり、同時に桜が満開となり、他の樹々も一斉に新しい緑の葉をつけ始めた。そして3月末の第22回「水陽・青葉会展」も無事盛況に推移して居り、小生のトークイベントにも多く参加頂き大変嬉しく思う。この為、気持ちも明るくなり、この4月を迎えた。やはり講座のスタートも、学校の入学も会社も4月期スタートは気持ちがすべてに切り替わるからいいと思う。

先月のコラム87では対比とそのバランスについて述べたが、ここで少し補足してみよう。
対比の中には白黒とカラーの補色がある。補色は反対色で赤と緑、黄と青がある。この補色の原色を画面上に接して使用するとコントラストが強すぎてギラギラする感じとなるが、うまく使用すれば強く引き立つ作品になる。我々が描く自然の中では光とカゲと中間色が多く、原色の補色組合せは少ない。ゴッホの様な描き方は別として、小生は原色での派手なカラー補色で対比を使用するケースは少なく、やはり明暗での濃度対比とその中間色でのバランスで作品をまとめるケースが殆どだ。

色は色相と明度、彩度による組み合わせ、そして光とカゲ。これらがすべて組み合わさってひとつの画面にバランスよく表現するのがいい。水彩風景スケッチの場合、好みの問題もあろうが、原色での補色使用で派手になり過ぎてもいけない。やはり、その対比と中間色のバランスが大切だろう。

日本人は昔から色の感性がよいと言われている。伝統的な日本画は中間色をベースとし素晴らしい色調を出している。小生の勝手な解釈だが、日本には素晴らしい四季がある。
四季の対比は夏と冬、春と秋であるが、冬と夏の間に春という中間トーンがあり、夏と冬の間に秋という中間トーンがある。この四季の変化が中間トーンを見る感覚を昔から養い、日本人の中間色トーンの感覚が研ぎ澄まされてきたものと思っている。小生の描く水彩・ペン彩スケッチ画は洋画の範疇であるが、対比もあり、水の含み加減での混色で中間トーン色を大いに駆使し、そしてそのバランスを工夫して描いている。

桜満開<岸根公園1>少し逆光で描く

左の作品はWBC野球で日本が優勝した午後、満開の岸根公園にて気分よく描いた作品。F4


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