(コラム68)

光とカゲD<反射光> 五十嵐吉彦 <2021.8.1>

水彩スケッチで光とカゲを生かし描く時、光の方向には順光、斜光、逆光がある旨を先に述べた。今回は普段さほど意識をしない「反射光」について述べよう。 反射光は文字通り、光が当たっている所から反射された光の事であり、柔らかい間接光と言える。この反射光が風景の場合、太陽の光が地面に当たり、その照り返しで建物の暗い軒下が真っ暗ではない場合や、白い壁に太陽の光が当たり、その壁の反射で反対側の壁がすこし明るい場合などである。反射光を利用すると物がより質感描写も出来、状況描写がよくなる場合がある。もちろん暗いところは反射光がない所や、無視して暗くする方が絵にコントラストが出ていい場合も多い。まあ状況に応じ反射光も入れてのトーン表現も意識するといいだろう。

小生が企業勤務時代の若いころ海外宣伝も担当していたが、新製品のポスターやカタログ制作を宣伝広告会社に依頼したとき、当時の一流広告写真家が実際に新製品を撮影する現場によく立ち会った。小生の注文は「新製品の特長を訴えた高品質写真での一流ポスターを創ること」だ。この時ある一流プロ写真家と知り合い、如何に質の高い写真を撮る為に、納得いくまでライティングに拘る姿勢に接した。今の様に撮った写真が瞬時に画像で見られる時代ではなかったので、テスト撮影にインスタントフイルムで画像を確認する。反射光も入れ、微妙な光の表現を納得するまで何回もやり直す。その光に対する拘りが勉強になった。その写真家はスポンサーの意向も取り入れたArt作品を創りだす。そうして出来た新製品ポスターは海外でも評判がいい。そのポスターが盗まれる程人気となった場合もあった。

光とカゲを描いたレンブラントは反射光をうまく使っている。油絵で人物象を描くのが主体なので水彩画とは重厚さは異なるが、斜光と反射光を生かして質感ある確かな描写力がいい。風景スケッチでも状況に応じ順光、斜光、逆光、そして反射光も意識しよう。
輝く水辺<子安運河>
*輝く水辺<子安運河>
右上からの逆光気味の斜光であり、運河が輝いている。
その中で手前の黄色の船は反射光を生かして少し明るめにした。

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