(コラム65)

光とカゲA Gradation & Contrast

(五十嵐吉彦 2021年5月1日)

いま新緑が光に輝き美しい。この新緑が眩い時期は気候もよくスケッチの最適シーズンであるが、残念ながらコロナ禍は終息せず、東京は3度目の緊急事態宣言を出した。また東京⇔神奈川の移動も自粛だ。小生講座もこの緊急事態宣言中は中止で、すべてを延期した。
昨年2020.3.12付で書いたコラム48「近くても1人静かに楽しめる水彩スケッチ」を読み直したが、今の状況と同じでそのままこのコラムが通用出来るが1年経過しても終息しないこのコロナ禍は本当に異常であり、試練の時だ。このコラムを書いている時に横浜市から小生宛「新型コロナウイルスワクチン接種券」が届いた。優先接種対象者である65才以上で高齢者の方から順番に発送していると書いてある。接種日時予約は5月初めからで電話か、パソコンから受付だが、どうやら予約が混雑で大変そうだが、早く接種しよう。

さて、マスク装着や消毒など安全対策を充分しながらでも、屋外で描く風景スケッチはやはり楽しい。今回のコラムは光とカゲ・トーンの補足としてグラデーションとコントラストについて簡単に述べてみよう。小生が描き、皆様に提唱している爽やかでメリハリのあるペン彩スケッチ画は、このグラデーションとコントラストのバランスで魅力ある作品が出来上がるとも言える。グラデーションとは諧調のことであり柔らかい段階的トーン差、即ちソフトな明度差の事である。一方、コントラストは硬いトーン差、即ち強い明度差と言える。

一般的な透明水彩での主たる技法は水と絵具での滲み、ぼかしであり柔らかい色変化のグラデーションであり、一方ペンによるシャープなスケッチ線や、光とカゲの強い差をコントラストという。このグラデーションとメリハリあるコントラスをうまく組み合わせて全体のバランスをもった作品が魅力あるペン彩スケッチ画と言えるだろう。参考作品としてコロナ禍発生の前年にイタリアで描いた作品を事例に説明してみよう。

*イタリア・アッシジで丘の上から教会を描いた作品。主役は教会であり、ペンによるスケッチの線を生かし、彩色も光とカゲでコントラストを利かせて際立たせた。加えて作品の上部はなだらかな斜面があり、遠方は薄く霧がかかったように少し霞んでいる。この部分は透明水彩に水を多く含ませ柔らかいグラデーションを出し、空気感を表現した。小生の描く水彩スケッチ画はこのようにグラデーション+コントラストを生かしたペン彩画である。

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