(コラム64)
光とカゲ&トーン(Tone)
(五十嵐吉彦 2021年4月1日)
さあ4月になり屋外でのスケッチシーズンの到来だ。とは言ってもまだコロナ禍の中であり伸々と描くまでにはいかない。コロナ対策を万全にし、密での飲食を避けて、安全に注意しながらスケッチに出かけ、光を浴びて描こう。そこには素晴らしい風景スケッチのテーマと光と豊富な色彩がある。そして輝かしい水彩スケッチを楽しみ、希望の光を見出していこう!
前回のコラム63で「トーン」の事を述べたが、トーンに関連する「光とカゲ」について少し補足しよう。拙著「水彩風景スケッチ<光とカゲのテクニック>」(2008年出版)にはその光とカゲについて述べているが、光とカゲによって風景はドラマチックに変わる。
その光とカゲのある風景を柔らかいトーンからコントラストが強いトーンまで、巾の広いトーンを使いこなせば物がより立体的に見え、遠近感も出て魅力ある作品となる。
数日前横浜で豪雨のあと綺麗な虹がでた。虹の色は日本では7色と決まっているが,アメリカでは6色といい、ドイツでは5色と言うらしい。でも光の基本色は赤・緑・青の3色であり、この混色で何万色もの色彩の表現が可能であり実に豊富だ。虹はその見え方で決めているが日本はニュートン説の様だ。その豊富な光の世界を水彩スケッチで描く時はスケッチブック上に描くのでスケッチの線の強弱に加え、透明水彩絵具での濃度差(トーン差)を加える。即ち絵具に水の含み具合と混色を駆使して明度+彩度のトーン差ある色彩を構築していこう。そこには色彩の奥深さと水彩スケッチ画の魅力が見えてくる。
豊富なトーン表現は難しいが、水彩スケッチを描いている方々にとって光はかけがえのない伴侶だと思う。だから孤独ではない。光と色、希望の光が生涯一緒にいてくれるからだ。
「桜と坂」 <東京・洗足池付近>:
何でもない坂と桜がある一隅を現場で描いた。
光と影のトーン差があると立体感が出てくる。
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