(コラム55)
スケッチは線、スケッチは脳刺激
(五十嵐吉彦 2020年8月16日)
前回コラムでは「スケッチは光、スケッチは力」と書いた。もちろん水彩スケッチの作品創りは「光」だけでなく、「線」、「色彩」、「構図」、「トーン」、「スピード」等が総合して1枚の作品が仕上がる。それだけに「水彩スケッチ」は奥が深い。ここで小生が現在描いている「ペン彩画」に絞って、少し基本に戻り順次補足で述べてみよう。過去のコラム内容と重複するところも出てくると思うが、そこは基本の復習と思って頂きたい。
今回は「線」についてだ。「線」とは鉛筆やペンの線を使用しているスケッチのことであるが、その中でも特に「ペン」を使用したスケッチについて述べよう。ペンだけを使用した白黒やセピア調の「ペン画」の歴史は古い。しかし小生が描くのは単色の「ペン画」ではなく、彩色が伴う「ペン彩画」である。昔から日本画の世界等では素描淡彩と言って本番作品の前段階の下絵的存在の淡彩スケッチ画分野があるが、小生が描く「ペン彩画」は、「ペン+透明水彩」であるのでペンの線を生かし、透明水彩の彩色も生かし、両方生かす「ペン彩画」分野である。もちろんペン彩画の彩色は淡く彩色する「ペン淡彩画」から、明度の巾を広げ濃淡のある彩色をする「ペン水彩画」まで巾広く、現在では一つのジャンルとなっている。
「ペン彩画」はペンでスケッチするので、消せなく難しいと思う方が多いが、慣れれば、これ程スケッチ画に向いている画材はないと思う。鉛筆は柔らかい対象物の表現にはいいが、歴史的建築物や船などの構造物の入った風景スケッチ画には「ペン彩画」が向いている。
形がはっきり描け、スピーディにメリハリのある表現で作品が出来るからだ。もちろんペン彩風景スケッチを描くには透視図法等、遠近法のマスターも必要だ。そして対象物をよく観察して、緊張感をもち、集中してペンを駆使して描いてゆく。この集中して線でスケッチする行為がよく、観察力を養い、脳細胞を刺激し、脳の活性化を生むと思う。小生は真っ白いスケッチブックに向かい、ペンを握るときが適度の緊張感あり至福の時である。
下記作品:世界遺産の町アッシジ<イタリア>
コムーネ広場の一隅でスピーディに描いた。
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