( コ ラ ム 6 )
Simple & Speedy、but Good Quality
五十嵐 吉彦 (2007.6.22)
コラム5では Simple & Speedy と書いたがその補足説明をしよう。 Simple & Speedy、but Good Quality は簡便でスピード仕上がりであるけれどもその画像品質がよい事の意味であるが、本来は High Quality と書きたい所であるが、Speedを伴うので Good Quality の画像で十分役に立つのである。デジタルカメラがそうだ。従来のコンベンショナルカメラ(銀塩フイルム使用カメラ)で35mm一眼レフカメラやブローニーサイズカメラ(6x6、6x4.5フイルム用)でリバーサルフイルムを使用する写真画質の品質は素晴らしく、まだまだデジタルカメラでの品質より濃度、諧調面、微妙な色再現で上回っており、現在でもプロカメラマンやハイアマチュアが作品作りに使用している。この差はデジカメ作品とフイルムカメラ写真を大きく引き伸ばしてみるとよく分かると思う。しかし、現在、新聞・報道、出版などの印刷分野はやはりスピードと品質とコストの勝負である。スピードを尊ぶものは High Quality でなくても Good Quality のものなら十分役に立つのだ。 只、いくらスピードが速くても Poor Quality では使えないし、役に立たないが、今はどんどんデジタルカメラの画素数も上がり、ものによっては早くて Good Quality から更に High Quality になりつつある。
絵の分野では現在上野や六本木の美術館で行う大作主義の油絵や水彩画は、時間を掛け、大きく、重い作品が多く、展示には広い面積を占める場所が必要で、小生から言わせれば「大会場芸術」、即ち「Large Space Art」といえる。これに対し小生提唱の水彩スケッチ画(含淡彩&ペン彩画)は「小会場芸術」、即ち家庭内にインテリアとして飾り、もちろん小会場でグループ展も出来、鑑賞できる芸術作品で 「Small Space Art」 だ。
この水彩スケッチ画の中の淡彩スケッチは昔は上記の油絵や日本画や大作水彩画を描くための素描淡彩とか下描きスケッチとか、所謂本番ではなく前段階の作品で、軽く見られていた点があると思う。水彩画自身もそうであろう。油絵や日本画が一流の絵で、水彩画はまだまだ本物の絵であると万人に認められていなかったのが現状ではなかっただろうか Simple & Speedy、but Good Quality の水彩スケッチ画は1時間〜3時間程度の時間で仕上げて完成作品とする芸術である。早いからと言って下絵では決してない。
早くてよい作品は、今までの技量、経験が凝縮してそこに発揮され、短時間ながらもよい作品となる。また感動される作品ともなる。
最近オープンした六本木の新国立美術館に水彩画展を見に行った。広く、天井が高い会場に大きく重厚な作品が2段掛で大変沢山並んでいて、鑑賞するのにいささか疲れた。また抽象画などではわかりにくくて感動する作品が少ないと思ったのは、私だけであろうか。やはり具象画は分り易く、その分感動する作品も多い。私は中高年が生涯描くには、Simple & Speedy、but Good Quality の分野、即ち屋外で描けるF4主体で簡便ながらも十分芸術性も発揮出来、感動も共有でき、部屋に飾って鑑賞出来る水彩スケッチ画、即ち「小会場芸術(Small Space Art)」分野で十分と益々確信するに至った。
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