( コ ラ ム 29 )
「見る」と「観る」のバランスが大切
五十嵐 吉彦(2012.8.8)
水彩スケッチは、現場で対象をよく見つめ、よく観察し描くことが大切である。
現場でF4サイズのスケッチブックに1〜2時間程度のスピードで水彩スケッチ画を仕上げるには、漠然と対象の風景を見ていてはスケッチは出来ない。また対象の風景を隅から
隅までじっくり観察しすぎて、きっちり描き過ぎても時間がかかり、硬いスケッチ画になってしまう。30分で描くスケッチ、1時間で描くスケッチ、また2時間で描くスケッチは、その描くスピードによって、密度、彩色が異なるが、共通点は対象の風景のどこを主役に選択し、どこを脇役にするか、構図の中で瞬時に決め、主役はよく観ながらも着実でスピーディに描き彩色し、脇役は主役程の観察でなくても見てラフに彩色すれば早く描ける。
この事は、風景スケッチでも、静物スケッチでも、対象を描く時、「見る(See)」より「観る(Look)」が大切であると言える。では「見る」と「観る」の違いはどのように違うのであろうか。通常「見る」は、見学、拝見、会見の如く、見る行為あり、観るほど注意深くみていない。それに対し「観る」は、観察、参観、観測など注意深く、注力を傾けてみる事であろう。
尚、「みる」は他に、看護の如くよく見守る「看る」、診察の如くみて判断する「診る」、試験の如くみてためす「試る」、そして監視する「監る」、鑑賞・鑑定する「鑑る」等、「みる」ひとつでも、色々な意味、使分けがある。
英語でも、「みる」の区分は多くあり、See、Look、Watch、更にはExamine、Inspect
やObserve、View、Gazeもある。「観る」はLookでありWatchというところか。
水彩スケッチの場合は「見る」より、「観る」が主であるが、常に少し離れて「見る」ことも大切である。即ち、「離見」の「見」である。また、あまり観察しすぎて細かくなる、
また、部分のみしかみていないのもよくない。全体の構図、バランスを離れて確かめる事が大切であり、よく言われる「木を見て、森をみず」であってはいけない。
逆に森ばかり見ていてもダメ。やはり両方のバランスよく「みる」ことが大切であろう。
これは、水彩スケッチでもビジネスでも人生でも同じであり、観る(短期)と、見る(長期)」のバランスが大切と思う。目先の行動に追われている毎日であろうが、少し先の中長期を見て、現時点の行動を見直すことも大切であり、やはり「見る」と「観る」のバランスが必要となろう。
水彩スケッチでは、「見る」と「観る」のバランスが大切。
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