( コ ラ ム 11続き)

水彩スケッチ画は線と色彩が大切 (2)

五十嵐吉彦(2008.6.22)

   スケッチするには、観察力が必要ですが、これはただ「見る」から「観る」になり部分的には「凝視」もありましょう。そして、どんな風景でも現場で形が取れ、スケッチ出来るように基本をマスターしてから、構図を工夫し形や色彩を自分なりに変えてゆくのがよいでしょう。この小生提唱の水彩スケッチは絵画の基本と言ってもよいかと思いますが、スケッチでもやればやるほど奥が深いものがあり、楽しいものです。

   よくデッサンとスケッチはどう違うか聞かれることもあります。
一般的にデッサン(dessin)は英語のドローイング(drawing)で、線で絵を描くことであり、絵を描く基本の力がデッサンと云えます。また日本では石膏デッサンや人物デッサンの如く1色〜2色程度のトーンをもった線による形の追求で少し時間をかけた作品とも云えます。これに対し、スケッチは写生を楽しむこともスケッチですが、眼に映った瞬間的な感動を忘れぬ内に描きとめることもスケッチで研究や観察の為にスケッチが必要とすることもあります。従って、対象をよく観察し、スピーディに描き、主対象がしっかり描かれていれば、全体がきっちり描かれなくて余白や、白地が残されていても許される絵が スケッチとも思っています。

   私の教室は線を活かす淡彩スケッチと彩色重視の水彩スケッチの両方OKですが、あまり淡彩、水彩の区別を厳格にしなくとも対象物に応じて、また描くスピードに応じて描きわければよいと思っています。そして、前述の如く水彩スケッチは小生なりの解釈をすると、重厚で時間をかけた水彩画に対し30分〜3時間程度の短時間で仕上げる作品、即ちSimple&Speedy(コラム5・6・7参照)で爽やかな水彩スケッチ画なのです。
  淡彩スケッチも水彩スケッチも線によるスケッチ力、透明水彩による彩色力、そしてスピード力が必要となります。どちらもマスターするには奥が深く、マスターするのは時間がかかります。だから生涯描けるのです。

   淡彩スケッチは線重視なのでスケッチ力の訓練が最優先で彩色はあっさりとする(あっさりと言っても適度な明度差が必要)。 水彩スケッチは彩色重視だからスケッチも当然訓練し、線の基本スケッチの上に透明水彩で彩色も重視するので彩色訓練も必要であります。
   線のスケッチに加え、彩色も色相、明度、彩度を駆使して彩色の幅を広げながら、線の世界に色彩の世界を加えてゆく。これが水彩スケッチの楽しさであり、醍醐味であり、この彩色に夢中になって時間が経つのも忘れている時が第2段階の楽しみです。

       水彩スケッチ画は線も色彩も大切です。

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